準備せよ!男性育休!令和4年4月スタート! 育児介護休業法 改正ポイントのまとめ(前編)【人事担当者向け編】
投稿日:2022.01.11
<育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け>
上記は今回の法改正の中の一部を抜粋したものです。
みなさんはこれを見ただけで内容の理解はできますでしょうか?
ちょっと何を言っているのかわからない…そんな人も多いと思います。
しかし、この文章の中には人事担当者には無視できない要素が詰まっています。
ザックリと説明しますと、「これから迎える令和4年4月までに、法改正ポイントについての説明ができるようにしたうえで、対象者が育休を取得しやすいよう社内環境を整えよ。これは義務である」と申しております。
聞いたことがあるけど、詳しくはわからないかも
あまり時間がないけどどうしたらいいんだろう??
そんな人事担当者の方向けに、今回は法改正ポイントの解説と具体的にどう動けばいいのかの詳細をご紹介します。
この記事が御社での法改正対応策の参考になれば幸いです!
では参りましょう!
厚生労働省が打ち出している改正の趣旨と改正の概要は以下の通りです。
改正の趣旨
出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、この出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、育児休業給付に関する所要の規定の整備等の措置を講ずる。
改正の概要
1.男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設(令和4年10月施行)
2.育児休業を取得しやすい雇用環境及び妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け(令和4年4月施行)
3.育児休業の分割取得(令和4年10月施行)
4.育児休業の取得の状況の公表の義務付け(令和5年4月施行)
5.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(令和4年4月施行)
6.育児休業給付に関する所要の規定の整備(雇用保険法)
※今回は主に1~5についてご説明させていただきます。
1~5まで、概要の通りの順番で各項目を説明していきます。(前編では1・2について、後編では3以降について取り上げます)
その後、時系列にまとめたもので振り返ります。
★就業規則の見直しをしましょう★
この表示のある項目は就業規則の変更が必要な項目です。
現行の育休制度の通りに就業規則を定めている企業様は、就業規則を新制度仕様に変える必要があるかと思いますので、ご注意ください。
目次
[1]男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設(令和4年10月施行)
★就業規則の見直しをしましょう★
「子の出生直後の時期」これはお子様が生まれてから8週間の間のことを指しています。
この期間におけるお休みを、「柔軟」な「枠組み」で新たに「創設」しますよ、ということです。
このお休みは『出生時育児休業』と言います。男性だけでなく例えば養子の子を持つ女性も対象になります。(産前産後休業中の女性は対象外)
別名「産後パパ育休」です。このコラムでは以下、産後パパ育休と呼んでいきましょう。
では具体的に、柔軟な枠組みとはどういったものなのでしょうか。厚労省からは下記のポイントについて改正内容が発表されています。
①対象期間、取得可能期間
→子の出生後8週間以内に4週間まで取得可能
※現行の育児休業制度では「原則子が1歳になるまで(最長2歳まで)」としか定められておりませんでした。
今回の改正により、子供が生まれてから8週間以内に合計で4週間までなら取得ができるようになりました。
※既に法定の育休制度とは別で、社内制度としての「育児目的のための休暇」を独自に設定されている企業様であれば、その日数も4週間の中に含めて確保されればよいとされています。
(社内休暇とは別に4週間を設けなければいけないのではありません)
②申出期間
→休業開始2週間前まで
※休業開始予定日の2週間前までに会社へ申し出なければなりません。
現行では原則1か月前までの申し出とされていましたので、期間が短くなっています。
ただ、円滑な取得のために会社側・労働者側双方で、申し出期限にかかわらず早めに申し出ができるようお互いに配慮していきましょう。
③分割取得
→2回まで分割取得可能
※出産直後の8週間の間に2回まで分割することが可能です。
日数の分け方については4週間以内であれば特に指定はないようです。
出生時や配偶者の退院時に取得してもよし、里帰りから帰るタイミングで取得してもよしです。
※分割取得する場合には初めにまとめて申し出ることとすることが適当です。
④休業中の就業
→事前に調整したうえで休業中の就業を可能とする。
※今まで休業中の就労は不可とされていました。
今回の改正により、労働者の意に反したものとならないよう、労使協定を締結している場合に限り、労使の合意した範囲内で許されています。
休業中の終業が可能とされているのはこの産後パパ育休のみです。
- [具体的な手続きの流れ]
- 労働者が就業してもよい場合は、会社側にその条件を申出
- 会社側は労働者が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示
(候補日等がない場合はその旨。テレワークも可能)
- 労働者が同意
- 会社側が通知
休業中の就業が可能に!
※就業可能日の上限があります※
・休業期間中の所定労働日・所定労働時間の半分
・休業開始日当日・終了予定日当日を就業日とする場合は当該日の所定労働時間数未満
この労働者からの申し出は、休業開始日や終了日をそれぞれ明らかにしてもらうことが望ましいです。ただ、業務状況の兼ね合いなどにより見通しが立てにくい場合は、休業開始前まで任意のタイミングで申し出ることができるとされています。休業開始までならばその条件の変更も可能です。
また、休業開始までは同意を撤回することが可能です。また休業開始後に、配偶者の疾病等や特別な事情があるときにも撤回することができます。
ずらっと書いてきましたが、文章だけではイメージが湧きづらいかと思いますので、イメージ画像を用意しました。
出生から8週間までは上記の各項目の要件を守れば、合計4週間分・2回までのお休みが取れますということです。
この出生直後のお休みが『産後パパ育休』です。
もちろんこの8週間の後も育休は取得可能です。後編の[3]で解説していきます。
[2]育児休業をしやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け(令和4年4月施行)
冒頭でご紹介した項目です。
今回の法改正の中でトップバッターで施行されるポイントのひとつです。
こちらも長いのですが、実は言っていることは複雑ではありません。
上の文章、区切りに/を入れてみますと、2つの項目に分かれます。
「育児休業を取得しやすい雇用環境整備 / 及び妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け」
つまり!
・職場を、育休の申し出や取得がしやすい環境にし、制度を整える
・該当者に個別に法制度を説明する時間を設け、そのうえでどのように育休を取得したいか聞いてみる
ということを「義務付け」しており、
さらにこれらを令和4年の4月から開始できるよう準備してください、ということを言っています。
でも、環境を整備するってどうするの?周知はどうやったらいいかわからない!
そんな人事担当者の方のために、2つの項目を順番に見ていきましょう。
①育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
育児休業と産後パパ育休の申し出をしやすくしましょうね、という項目です。
今までは環境整備に関する規定はありませんでした。今回新しく設置された規定ということになります。
会社は厚生労働省が指定している以下の措置を行わなければなりません。
(複数の措置を講じることが望ましいとされています)
1.育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施 2.育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置) 3.自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供 4.自社の労働者への育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知 |
社内で従業員向けに研修を行い、または個別に相談を受け付ける体制を整える。
または取得した事例は記録しておき、または自社が育休についてどう考えているのかの方針を発表しなければならない…。(すべての措置をとることは必ずしも義務ではありません)
そもそも制度について詳しくないんです…。
相談なんて受けれるかなあ
おっしゃるとおり。だからこそこちらの記事を見ていただいているのかと思います。
ご安心ください。以降もこのシリーズを読めばとっても詳しくなれます!(笑)
そしてこの記事で前情報をつかんだ後、厚生労働省などが行っているウェブセミナー等へのご参加もおすすめします。
現在の男女の育休取得率について・法改正の内容について・企業の育休取得事例紹介など、参考情報が盛りだくさんでしたので、ぜひ受けてみてください。
同業種・同規模の企業様のご紹介があれば、どういった施策を実施されているのかヒントになるかと思います。
また、研修用の動画も公開されています。
最終的には外部の専門家に研修や対応策を一緒に考えてもらうことも一つかなと思います。
もちろん弊事務所へのご相談もお待ちしております!(笑)
②妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
申し出をした労働者に対して、個別に育児休業制度等の説明と意向確認する機会を設けましょう。という項目です。
今までは個別周知することが努力義務(~するよう努力する)として規定されていたにすぎなかったのですが、こちらも義務付けがされることになりました。
(取得を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません)
厚生労働省が指定している周知事項と方法は以下の通りです。
周知事項 | 1.育児休業・産後パパ育休に関する制度 2.育児休業・産後パパ育休の申し出先 3.育児休業給付に関すること 4.労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い |
個別周知・意向確認の方法 | 1.面談 2.書面交付 3.FAX 4.電子メール等 のいずれか |
おそらく人事担当者の方が制度に関してのご説明にあたられるかと思います。
周知項目の1.に関しては前項目のウェブセミナー等で本改正の内容の詳細を勉強しておくことをおすすめいたします。(くどいですがこの記事もなかなかいいですよ)
また、周知項目2.についても同じ人事担当者の方やその部署が申し出先となるのかなと思いますので、周知の際に「こちらへどうぞ」と明記してあげてください。
そして周知項目3ですが、雇用保険の育児休業給付について説明してくださいということです。
簡単に「育児休業給付とは?」
被保険者の方が1歳に満たない子を養育するための育児休業を取得し、育児休業期間中の賃金が休業開始時の賃金と比べて80%未満に低下したとき、一定の要件を満たした場合に、公共職業安定所への支給申請により支給されるもの。
女性は育児休業開始時から、男性は配偶者の出産時から支給対象期間となります。
ここでは具体的な申請方法については触れませんが、育休取得中の賃金が低い日は給付を申請しますよ、ということを説明してあげます。
そして今回の法改正の内容も対象となります。[1]の産後パパ育休ももちろん対象です。
もし産後パパ育休中に就業日がある場合は、就業日数がその月で 最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間) である場合に給付の対象となります。なので就業日の予定を立てるときに、もし10日以上働く予定になっていたらその対象者に声をかけてあげてください。
周知事項4.については見直しが行われます。
社会保険料は現在、月末時点で育休に入っていればその当月分が免除になる仕組みです。
そのため産後パパ育休等、短期間の育休を取得しているとその期間が月末をまたぐのか否かで免除されるかどうかが変わってしまいます。
これを防ぐため、今回の法改正の内容に対応して、月内に2週間以上休業を取得した人には当月分の社会保険料が免除されるようになりました。
賞与に係る社会保険料に関しても、今までは賞与月の月末に育休を取得していれば、賞与が支払われていても全額分免除とされていました。
しかしこの仕組みでは賞与月の月末に全額免除を狙って育休を取得しようとする動きが多いとの指摘が以前からありました。
今回の法改正に合わせて、今後は賞与の社会保険料の免除は1ヶ月超えの育休取得者のみに適用されるようになります。
前編では、改正項目のうち、
「1.男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設(令和4年10月施行)」
「2.育児休業を取得しやすい雇用環境及び妊娠・出産の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け(令和4年4月施行)について解説いたしました。
後編では続いて
「3.育児休業の分割取得(令和4年10月施行)」
「4.育児休業の取得の状況の公表の義務付け(令和5年4月施行)」
「5.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(令和4年4月施行)」について解説しております。
引き続きよろしくお願いいたします!
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